専門職としての能力が必要な医療通訳の世界

医療通訳を取り巻く現状は大きく揺れ動いています。
日本において医療通訳は主に在住外国人に対して行われてきましたが、近年メディカルツーリズムなど医療目的で訪日する外国人観光客が増加しており、対象者や状況が多様化しています。
この多様な状況や対象者に対応する通訳者は通訳上の倫理的問題に直面することも多いです。
元来、医療の場はさまざまな文化や価値観が重層する場になります。
外国人や聴覚障害者などコミュニケーション障害者が持っている文化や現場独特の文化、多くの専門職が集合している専門職文化などが交錯しています。
また、人の死生観やどのように生きてきたかというライフヒストリー、ジェンダーや家族力学などの価値観も絡みあっている場です。
さらに、ただ処置を施すというのではなく、対人援助の場でもあり、患者が医療の中心にいて、その主体性や自己決定が尊重されるところになります。
この場での通訳は、専門職としての能力と技術を要します。